【お客様訪問】株式会社パレオ・ラボ AMS 年代測定施設様
PJLAは新たにISO/IEC17025認定を取得したお客様を訪問し、認定証授与式を行うとともに
認定に関わるこれまでの準備や今後の活動について取材を行い、これから本規格の認定を
検討されている試験所・校正機関の皆様に参考となる生の情報提供を行っております。
今回は株式会社パレオ・ラボ AMS 年代測定施設様(群馬県桐生市、対象業務:ASTM D6866 に準拠した加速器質量分析法(AMS)による放射性炭素の測定)を訪問し、認定取得のきっかけ、工夫した点、今後の取り組みについて、現地に訪問し、今回の認定取得に関わった副社長伊藤様にお話を伺いました。
Q1:パレオ・ラボ様の業務、お客様について。
遺跡発掘調査や地質調査で採取されたサンプルの年代測定や材質分析などを中心に受託分析サービスを提供している会社です。遺跡の年代や過去の人たちがどんな材料で道具を作っていたか調べる業務や火山噴火の年代など災害履歴を調べる業務に携わっています。
お客様は、主に自治体、発掘調査を担う財団法人や企業、大学、研究所、地質調査コンサルタント会社などです。また、今回の認定範囲である炭素14濃度に基づくバイオベース度測定については、プラスチックの素材メーカーなどバイオマス製品に関わる企業からの依頼もあります。
認定取得に関わったメンバーの皆さまAMS 年代測定施設で行われた認定証授与式(左:副社長伊藤様)
Q2:認定取得のきっかけやお客様からの問い合わせ、要望。
石油に由来するCO2ガスを削減するためにバイオ燃料やバイオプラスチックの利用が推進されており、バイオマス由来の材料がどの程度含まれているか科学的な裏付けを行うためのバイオベース度測定の重要性が高まっている話を数年前から複数の方から聞いていました。その話を受けて、弊社で従来は年代測定のために行ってきた炭素14濃度測定の新たな応用としてバイオベース度測定に注目するようになりました。さらに、顧客と具体的な相談を重ねる中で、日本国外へバイオマス製品を輸出する場合に、日本国内で測定したバイオベース度をそのまま輸出先で認めてもらうためには、ISO17025の認定を受けている機関で測定した値でなければならないと認識し、弊社はISO17025認定取得を目指すようになりました。
Q3:認定準備で苦労した事、認定を取得して良かった事。
業務を行う上での手順やマニュアルが十分に整備されていなかったため、手順書の作成に時間がかかりました。また、これまで分析手順は技術者個々の職人芸に頼る部分があり、手順書に具体的に記述するための分析手順の標準化と明文化に苦労しました。
一方、分析手順の標準化と明文化を行ったおかげで、分析手順を見直す機会となり無駄の削除や不足点の改良に繋がり、技術者への教育内容が具体的になり、急な欠員があっても業務が停滞しにくくなり、より安定して信頼性の高い分析を行えるようになったと感じています。
AMS 年代測定試験業務の様子
Q4:今回の認定機関をPJLAにした理由
炭素14濃度に基づくバイオベース度測定におけるISO17025認定の実績を有するのが、PJLAだったためです。
Q5:今後の試験所としての取り組みについて
ISO17025の認定を受ける範囲をさらに広げて、弊社全体をより安定して信頼性の高い分析結果を提供できる試験所にしていきたいと考えています。
Q6:同業者も含めた今後ISO17025を取得する試験所へのメッセージ
認定に向けて手順書の整備や組織の改革が必要になり苦労が多いと思いますが、それに見合うだけの価値がISO17025にはあると思います。
AMS 年代測定施設の認定範囲の拡大、信頼性の向上も視野に入れる
PJLAは非常に広範囲の認定業務を取り扱う認定機関ですが、パレオ・ラボ様が今回認定を取得されたAMS年代測定試験も、かなり独自性の高い業務です。
その専門性から産・官・学の多くの組織間のネットワークの中でも非常に貴重な役割を担い、その存在感は増すばかりの様子がうかがえます。ISO17025認定取得で「職人芸」に依存する体制から「標準化」「明文化」により、業務が整理され、「組織」として一丸となって試験結果の信頼性や自社の存在価値の向上に挑戦し続けるパレオ・ラボ様の躍進に期待が膨らみます。
【取材:事務局】